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中小企業の社員の健康対策

これは平成25年11月に開かれた講習会で北見昌朗が配布した資料です。

健康診断を実施しているか?

健康診断の実施計画を立てよう

社員の健康診断

私は社会保険労務士という仕事の性格上、中小企業の社員の健康問題に直面することが多い。うつ病などの理由で会社を長期欠勤する人が増え、対応に苦慮する中小企業が増えている。

また、成人病で倒れた社員の遺族が、業務上災害だったと会社を訴えたことも現実に起きており、その賠償額の大きさに驚く。小さな会社だと、会社が潰れかねないほどの額だ。

定期健康診断は行っているものの…

問題が頻発するので、私は顧客を訪問した際に、社員の健康診断結果を見せてもらうようにした。そこで感じたことは次の通りだ。

問題①
定期健康診断は行っているが、その内容をチェックできてない。事後措置ができていない。
問題②
過重労働の社員に対する産業医の面接指導ができていない。
問題③
36時間外協定の範囲を超過している場合が多く、問題が起きたらスグ事業主責任になってしまう可能性が大きい。

健康診断の結果を会社がチェックしているか?

北見昌朗からの提案! 定期健康診断実施シート

私はそのような体験を元に、中小企業は社員の健康管理をどう行うべきなのか考えた。そこで顧客に健康診断実施マニュアルを提案するようにした。

講習会では、北見昌朗が作成した「定期健康診断実施シート」というシートを配布した。これは北見昌朗の考えによる、中小企業向けの提案だ。

法定を上回った内容になっている部分もあるが、参考にして頂けると思う。スペースの関係で、ここに掲載することはできないが、必要なら事務局からもらってほしい。
(この記述は主催者の会報に載せた文章であり、ネット上では閲覧できません)

ポイント①社員1人ごとに定期健康診断実施シートを作る

中小企業は、大手と違って社員の顔が見える。誰の健康状態がどうなっているのか、おおむねの想像ができるはずだ。

健康管理は、年齢とか、健康状態によって、その必要度が異なる。だから社員1人ごとに定期健康診断実施シートを作る。

つまり『要注意人物』を見出して、その健康配慮義務をしっかり果たそうというわけだ。

ポイント②社員と家族に対して健康管理に関する社長の想いを伝えたい

定期健康診断実施シートには、左上に『社員名』が載っている。ここには氏名を書くのだから、まさに貴殿向けのシートということになる。

そして、右下には社長のサイン欄があり、
「私は社員の健康状態をきちんと把握して、その健康に配慮しながら働いて頂きたいと思っています。何かございましたら、何なりとお申し出下さい」
と書いてある。

定期健康診断実施シートには、社員の署名欄と、家族の署名欄もある。ここはイザとなったら会社と家族との信頼関係が重要になるという経験から生まれたものだ。

ポイント③過重労働になっている社員に年数回の健康診断を実施したい

労働安全衛生法は、残業が多くて過重労働になっている社員に対して、産業医の面接指導を受けるように定めている。

そこで、残業が多かった社員に対しては、健康診断を年に複数回行うこと、そして診断項目も充実することをお勧めしたい。

ポイント④前年の数値が良くなかった社員には診断項目を増やす

前年の検診で、数値が良くなかった社員は、言ってみれば『要注意人物』である。

その人には、健康診断を年に複数回行うこと、そして診断項目も充実することをお勧めしたい。

ポイント⑤『法定の健康診断以上』の項目を実施していることを伝えたい

労働法規で定めている健康診断は、その診断項目が年齢によって分かれている。若い人は診断項目が少なくなっている。

だが、北見の見聞によると、案外一人暮らしの若手男性社員の数値が良くないのが眼に付く。食生活に問題があると想像する。

そこで数値の良くなかった『要注意人物』に対しては、仮に若かったとしても、『法定の健康診断以上』の項目を実施することを社員にお伝えするようにしたい。

ポイント⑥健康保険による診断の方がコストパフォーマンスが高い場合も

健康診断は、労働法規で定められた定期健康診断のほかに、健康保険などの給付を得て行うものもある。

比較検討すると、健康保険の方が内容が優れているものもあるので、比較検討するとよい。

ポイント⑦食事や運動に気を使うという点で社員に自己管理を求めたい

定期健康診断実施シートには体重に関して「増えている 変わらず 減っている」という記入する欄がある。そして「している していない」という運動を記入する欄がある。

また食事についても、頻繁に食べるものとして「コンビニ弁当 ポテトチップス カップラーメン」に○を打つ欄がある。

ポイント⑧健康診断後の措置を行う

健康診断の結果で問題が発見された場合は、会社は「受診勧告」を忘れないでほしい。その実施をしていたかどうかで、事業主責任の重さが変わってくる。

難しい言葉になるが『安全配慮義務』というものがある。

これは『健康配慮義務』と言い換えることもできる。これが今後の労務管理のキーワードになるので、経営者はその言葉を肝に銘じてほしい。